カット・ボランティアは忘れていた美容師の原点を思い出させてくれた
スタイリストとして活躍するかたわら、ヘアドネーションや海外でのカット・ボランティアなどのSDGs活動に約10年前から取り組み、フィリピンに早期スタイリスト育成学校を設立した、ヘアサロンDONNA（奈良県）の代表、佐々木勝さん。佐々木さんをボランティアや学校設立に駆り立てるものは何かと聞いたところ、そこにはサロン業界の未来に対する佐々木さんの熱い思いがありました。前後編に分けて紹介します。
佐々木さん（左）とカットされて笑顔の女の子
―佐々木さんのミニモのページにヘアドネーションの動画がアップされています。最近始めたのですか？
10年くらい前から取り組んでいます。自分の中ではサロンワークの一部になっていましたし、友人のヘアドネーション活動に乗っかってる立場なので、あえて積極的にアピールしてこなかっただけなんです。最近また、ヘアドネーションが話題になってきたので、ヘアドネーションに参加したいお客様のために動画を公開しました。
―フィリピンでカット・ボランティアもしているそうですね。（動画はコチラ）
カットのボランティアも、始めたのは10年ほど前かな。コロナ禍になってからはできていませんが。友人がセブ島でNPO（非営利活動）法人をしているので、自分に何かできることはあるかと聞いたら「現地には、美容室に行ったことがない人がたくさんいるから、髪を切ってくれたら喜ぶよ」と言われて始めました。
―カット・ボランティアを始めて感じたことを教えてください。
日本人の多くはヘアサロンに通うことが当たり前になっていますが、フィリピンでは、ヘアサロンへ行くお金がなく、一生ヘアサロンへ行かないままの人も大勢います。中には、スモーキーマウンテンと呼ばれるゴミの山で、お金になりそうな物を探して暮らす人々もいます。美容師にカットしてもらった経験がない人たちは、私たちが日常やっているカットをしただけでも、目をキラキラと輝かせて、まるで夢がかなったような笑顔で喜んでくれます。
初めてボランティア・カットをしたとき、僕は思い出したんです。美容師の原点を。
「ああ、この笑顔が、喜んでくれる笑顔がうれしくて、僕は美容師をやっているんだった」って。
18歳で美容師になり、19歳でスタイリストデビューし、サロンワークに追われながら、独立して、経営者になって…… 日々の忙しさの中で、美容師であることの意味や喜びを忘れていたなって。初心に帰りました。
フィリピンでは、美容師免許がなくてもカットできるんです。そこで僕は、
「それなら、学生のカットモデルを現地（フィリピン）の人たちにお願いすれば、現地の人は喜んでくれるし、学生はウィッグではなく人の髪で実践ができ、早期に100人のカット経験が積める！」
と、フィリピンに早期デビューできるスタイリスト育成学校を創りました。
ただ、フィリピンで学んだり海外の人とコミュニケーションをとったりするには、英語力が必要です。そこで、フィリピンで語学留学事業をしていた友人に相談して、学校のカリキュラムに英語を組み込みました。
卒業直後にアラブの王族に雇われ年収1000万円で契約した人も
―どのような人が入学していますか？
早くカット経験を積んでスタイリストデビューしたい人はもちろん、すでに美容師免許を持っているけどブランクがあるから通う、という人もいます。また、語学と技術を同時に学べてリゾートもできる条件が魅力で来る人もいます。
―卒業後の勤務地は？
卒業後、半数は日本へ帰国してスタイリストとして働きます。海外でデビューする人もたくさんいますよ。でも、フィリピンだと月収2万円程度なので、稼ぎたいならヨーロッパ、中国、ドバイ、アラブなどをすすめています。日本人は技術力が高いので、海外のニーズはあります。
―卒業後、海外デビューしたスタイリストさんで印象深い人はいますか？
卒業生の中では、アラブの王族に専属スタイリストとして採用された実例があります。若くして年収1000万円の報酬をもらっています。日本人の感覚だと夢のような話ですよね。
日本でスタイリストとして働いて1000万円稼ぐって、けっこう大変です。でも、海外に目を向けると、日本人スタイリストになら大金を払ってでもお願いしたい人たちが大勢いるんです。
そのため、全国各地のスタイリストさんやサロン経営者さんから、海外進出の相談がよくきます。ただ、海外で成功しない人の特徴ってあるんです。それは……
後編に続く。
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