田中:ここからは美容業界に特化した質問をさせてください。
美容サロンの来店周期は年に3〜4回と長く、そこにコロナ禍で拍車がかかって、顧客との接触頻度が極端に少ない状況です。
飲食店のように1日3食選んでもらうようなチャンスもないのですが、顧客にアプローチする方法はありますか?
前提として、あえて媚びる必要はない
津田:アプローチが必要な場面もありますが、そもそも「ファンを作る」ために何かを仕掛けるのではなく、「ファンと出会う」という考え方が良いと思います。
なぜかというと、ファンの定義でもお話ししたように、サロンが大切にする考え方や価値観に共感してくれる人がファンなので、あえて媚びるような必要はないはずです。
それに、好かれようと無理に皆さんの考えをねじ曲げると、そもそものサロンの良さや価値が失われてしまう可能性もあります。
「ファンにするために何かを仕掛けよう」と媚びずに、皆さんが大事だと思うこと、好きなことを突き詰めた先で、それに共感するファンと出会えるのではないでしょうか。
見えづらい本質的な価値こそ、ファンに出会うチャンスを作る
津田:どんなサロンにも、創業時のオーナーの思いや理念があって、お店の歴史のなかで従業員と培った文化や考え方があり、そのうえに従業員の方や技術や知識が積み重なって、その成果としてサービスが世に出ています。
実際に顧客に見えているのは、ほんの一部。ほぼ表面的な「サービス」しか見えていないんですね。
その裏にある人の努力とか思いとかチームワークとか、そういったものに人は情緒を感じるのですが、ほぼ見えてない。
そういった見えづらい部分にこそ、ファンになってもらうための「情緒的価値」や「未来価値」の種があるので、これをどう見せていくか、どう伝えていくかが大切です。
ただ、お客さまは急に大好きになったりファンになったりしません。
急にサロンが「僕たちの裏側を見てください!」と言い出したところで引いてしまう方もいるので、注意してくださいね(笑)
だから焦らずに、じわじわとサロンのお客さまが好ましく思うようにコミュニケーションを積み重ねていきましょう。
大切なのは、”そのサロンらしい伝え方”
津田:最初の質問に戻ると、来店周期が少なくても、前提として無理やりファンになってもらうために自分たちをねじ曲げる必要はなくて、お店に来てくれたときに心から感謝を伝えたり、自分たちの見えづらい部分を少しずつ見せたりしていくのがベストだと思います。
プロモーションとしてDMやメッセージを送るだけではなく、自分たちの見えづらい部分、例えば人の内面や人のあたたかさが滲み出るようなアプローチも有効だと思います。
例えば、スタッフの自己紹介が送られてきても、薄いファンには刺さりませんが、ファンになりかけている人には「ああ、久しぶりに○○さんと話したいな……。」と思うきっかけになるかもしれません。
そのサロンらしいやり方で、少しずつお互いの理解が深まっていくようなアプローチを考えるのがいいでしょう。
田中:美容室に関していえば、来店頻度は少なくても、1度の来店時間は2〜3時間と長いので、お客さまと深くコミュニケーションを取れるチャンスはあるのかもしれません。
津田:飲食店での例だと、レストランでもだいたい1時間くらいの滞在時間がありますよね。
普通はメニューブックには料理と値段しか載っていませんが、そこにシェフやスタッフの自己紹介や小話などを入れて、オーダーしてから料理が来るまでの待ち時間などにお客さまの目に自然と入るようにしたら、お客さまにも喜ばれたそうです。
サロンの目指す方向性によりますが、お客さまと関わる時間を大切にし、どう関係性を作っていくかを考えるのは面白いことだと思います。
田中:美容師のような技術者は技術を重視して、それを自信に変えている人が多い印象ですが、僕が素人目で思うのは、技術の良し悪しは一定レベルを超えてしまうとわからないんですよ。
そこで、第三者としては、その技術者が技術を得るためにどんな苦労があったのか、どんな挫折があったのかを知れると、見えにくいからこそ面白そうに感じました。
津田:なるほど、後ほど出てくる「共感」にも繋がりそうな話ですね。
相手の中に自分と同じものを見つけられると、その人を好きになることってよくあることなので、その出し方も試行錯誤できそうですね。
今回のまとめ ✅
- 接触頻度は少なくても、サロンの考え方・価値観に共感してくれるファンはもちろんいる
- あえて媚びる必要はないので、サロンの目指す姿に合った自然な伝え方をしよう
- その際、ファンになってもらうための「情緒的価値」や「未来価値」も伝わるとベスト
次回、気になる美容業界の離職率にもファンベースは有効なのかをお届けします。