ミニモで着実に実績を上げている美容師(スタイリスト)・ネイリスト・アイデザイナーがコラムニストとなって、現場目線で集客・接客・技術・育成・経営などについて語るパートナーズコラム『Company(カンパニー)』が始まります。
先日、スタートアップに協力してくださる4名のスタイリストによるオンライン座談会を開催しましたので、その様子を前編・後編に分けてリポートします。
布施拓也さん(銀座)美容師歴14年目 フリーランス
河原恭平さん(町田)美容師歴13年目 サロン経営者・新規出店計画中
宮本伸一さん(兵庫)美容師歴16年目 プロフェッショナルカラーリングデザイナー
後藤博徳さん(池袋)美容師歴23年目 業務委託美容師・独立計画中
コロナ禍・店販の賛否・若手育成・カルテのデジタル化…それぞれの対策とは?【座談会 前編】
編集部 このたびは『Company』のコラムニストとしてご参加いただき、ありがとうございます。なかなかコロナ禍が落ち着きませんが、コロナ禍になる前と今とで、サロンに変化はありましたか?
宮本さん(以下、敬称略) 緊急事態宣言が出たときは売上が落ちましたが、今は持ち直しました。コロナによる三密の回避と、社内の体制改善でアシスタントの数が減ったことが重なって、それまでは予約時間を複数人重ねていたのですが、できなくなりました。来店周期を延ばせるお客様には延ばしてもらったり、お客様から来店周期を延ばしたいとお申し出があったりしたことで、なんとか循環していた感じでした。
河原さん(以下、敬称略) うちも緊急事態宣言のときは売上が落ちましたが、今は回復してきました。リモートワークだったりイベントが減ったりして、こまめにサロンに通う必要性がなくなっているのか、来店周期が長くなりました。
また、とくにコロナ用メニューという打ち出しはしていませんでしたが、ヘッドスパのオーダーが増えました。エステやマッサージとかに行きにくい時期だから、サロンに来たときに合わせてやりたいということなのかもしれません。さらに、イベント減少の影響なのか、繁忙期と閑散期の来店数の差が減りました。
後藤さん(以下、敬称略) 確かに。これまでは土日に来店が集中していましたが、コロナ禍になってからは、平日のアイドルタイム(来店の少ない時間帯)にも来店が増えました。リモートワークで時間の使い方が変わったんだと思います。中には「リモートワーク中に来ました」というお客様もいたり……。
社会動向に振り回されない営業のコツとは
編集部 リモートワーク中はダメですね(笑)布施さんが働く銀座はどうですか?
布施さん(以下、敬称略) 銀座としての変化は、海外からのお客様がほぼゼロになったことですね。うちも緊急事態宣言中は売上が落ちましたが、その後は売上が伸び続けているので、コロナ禍によるダメージはそんなに感じてないです。
編集部 コロナ禍で売上を伸ばすコツってあるんですか?
布施 売上を伸ばすためじゃなくて、どんなときも「どうすればお客様が喜んでくれるか」を考えて技術や接客を提供し続け、お客様に信頼してもらうこと。これが、社会の動向に振り回されず営業するために必要な心構えだと思います。
例えば、僕は店販を一切しません。サロンで売る商品って正直、ネットで安く買えるじゃないですか。しかも配送してくれるから、シャンプーなどの重たい荷物を持って帰らなくて済むので、お客様にとってはいいことばかり。僕は、良いと思う商品は勧めますけど、店で売るんじゃなくて、どこで買えるか調べて教えています。
編集部 確かに、店販は取り扱いや勧め方に賛否ある課題です。
後藤 僕も店販商品を無理に勧めたりはしないですが、コロナ禍で店販の売上は上がりました。自分でもびっくりしたのが、ドライヤー。ホームケアの時間が増えたからか、ちょっといいドライヤーを買いたいというお客様が増えて、コロナ禍前は月に2~3万円しか売れていなかったのに、コロナ禍になって、20万円売れた月もありました。
宮本 ホームケア商品の売上は確かに増えましたね。カラーシャンプーがよく売れます。
勉強意欲があればキャリアに関係なく売れる時代
編集部 美容業界は、コロナ禍になる前からすでに、様変わりし始めていたと思います。業界の変化としては、どのような点に注目していますか?
後藤 僕が美容師になった23年前頃は「イベント前は必ず美容室に行く」みたいに、サロンに対する特別感がありました。今はもっとカジュアルですよね。他にも薬剤が進化して髪の毛のダメージや残臭が減って扱う美容師の手にも優しい製品が増えました。
技術面では、インターネットの普及で学び方が大きく変わりました。以前は、サロンの先輩の技術を見て学んだり、営業時間外に夜通し練習したり、講習会に参加したりする勉強方法がほとんどでした。今はネットで幅広い情報が得られます。勉強意欲がある人ほど、どんどん情報を得て上達していける時代になりました。
宮本 僕が美容師になった16年前は、街でモデルハントをしなくてもmixi(ミクシィ)でモデル募集ができるようになってはいましたが、それでも基本はアナログで、モデルハントもしたし、ネット動画でカット技術が無料で学べるなんてこと、ありませんでした。
若手はデジタルネイティブなので、やる気がある子ほど上手にデジタル技術を使って集客したり、勉強したりして、実績をつくっていけます。
布施 意欲がある人はどんどん売れるようになる時代になったから、キャリアは関係なくなりましたし、それでいいと僕は思います。
おくすり手帳のヘアサロン版「スタイリング手帳」で履歴を共有しては?
編集部 皆さん、カルテはデジタル化しましたか?
宮本 うちの店は、まだ紙です。場所を取るのでデジタル化したいのですが、けっこう時間がかかりそうなので、なかなか重い腰が上がっていないのが現状です。1日で終わるとかだといいんですが……。
河原 うちもまだ紙です。パソコンが1台しかなかったり、専用アプリが必要だったりするので、全員で使うのは不便かなと思って紙のままです。今、2店舗目の出店にあたり「やっぱりデジタル化しておけばよかった」と反省してます。紙だと、カルテ1件ずつについて、店舗で共有するのか新店に移動するのかなど決めないといけないですしね。
布施 うちは働き方が多様(正社員、業務委託、フリーランスが混在)なので、カルテは個人に任されています。カルテ、作ってない人もいますよ。
いっそカルテを「おくすり手帳」みたいな「スタイリング手帳」にして、全国のサロンで共有できるようにすればいいのにと思ってるんです。
美容師の皆さん、他の美容師に見せてマズイ薬剤とか使ったりしてないでしょ? それなら、どんな薬剤を使ってどんな技術を提供したか「スタイリング手帳」に記録して、お客様がどのスタイリストにお願いしても前回の技術を引き継げるようにすれば、仕上がりが良くなって、お客様にも美容師にもありがたいですよね。
編集部 スタイリング手帳!いいアイデアですね。アプリなどで共有できれば、さらに便利そうです。
後編はコチラ。